キングダム考察|桓騎の“怒り”とは何か。人の善意こそが根っこ!差別や復讐ではない
キングダムでもファンが多い桓騎。
桓騎は元野盗であった以外、出生などの過去は全くの謎となっています。
砂鬼一家の古株に聞く話だと、桓騎は何かに対して強い怒りを持っており、怒りこそが桓騎の強さだと語っていました。
桓騎は元野盗であり、生まれた時から野盗をやっていたのかは定かではありません。
もし野盗に「落ちる」形であったとするのなら「落ちた理由」が存在します。
桓騎の怒りとは一体「何に対しての怒り」なのでしょうか。
桓騎の怒り
キングダムで六大将軍に任命されながもヒール役を担う桓騎。
元野盗だけあって戦い方も他の武将とは異質となっています。
誰も想像のつかない戦術によって廉頗将軍の四天王である玄峰という軍略家も容易に討ち取っていました。
玄峰は「軍略と呼べる代物ではないぞ愚か者が」と言いましたが、現実に討ち取った実力は相当なもの。
軍略?知るかよ。
俺はただ相手が嫌がることをやるだけだ。
それから昔から得意なんだよ留守中に忍び込むのがな。
-桓騎-
(キングダム212話)
「相手の嫌がることをやるだけ」
これが念頭にあるのが桓騎の戦のやり方です。
それは信も軍に入って戦った三大天に近い存在だった慶舎との戦いである黒羊でも見て取れました。
勿論、信も羌瘣も桓騎の戦い方を嫌っていました。
ただ実際に戦果として高いものをあげた桓騎のやり方というのも意味がなかった訳ではありません。
これは桓騎の戦のやり方が人の命を救うにも至っているという現実です。
本来黒羊で丘取りの合戦が行われていれば戦死者は今の倍はいたことになります。
要するに桓騎は味方の死ぬはずだった兵の多くを救ったということです。
確かにやったことは趙人である村の何の罪もない者を惨殺。
とんでもない残忍な方法で慶舎の後に将となった紀彗の追い出しがあったから。
一瞬何が正しいのか分からなくなってしまいそうな描写でもありました。
桓騎の怒りとは何か
これほどまでに強くどんな軍略家からも出てこない策を用いる桓騎。
そんな桓騎の根底にあるものと言われる「怒り」とは何なのか。
飛信隊に入った那貴も何も分からないと言っています。
お頭はなぞが多い人だ。
何であんなに強いのか。
家族はいるのか
そもそもどこから来たのか。
-那貴-
(キングダム484話)
出生も分からなければどこから来たのかも分かっていません。
ただ最古参である砂鬼が「根っこは怒り」と言いました。
まずもって気になるのは「砂鬼が最古参」という点ではないかと感じます。
あれだけの残虐なことを仕上げる砂鬼を最古参に持つというだけで恐ろしいほどの人間に対する憎悪を持っている気がしてなりません。
桓騎は人そのものに対して大きな怒りを持っているのではないでしょうか。
身内なり一族を惨殺された過去があるのかもしれません。
身分による格差社会への怒り
私はキングダムが描かれる時代の流れから桓騎の怒りを考察。
私は桓騎が当時の中華における身分制度に怒りを抱いているのではないかと考えてみます。
キングダムが描かれた社会では周時代から続く氏族制度が根付いていました。
氏族制度とは血縁関係による身分制度となります。
生まれた家によって身分が決まっており、どれだけ才能があっても認められない世界です。
桓騎は身分の低い生まれで若くして才覚に溢れながらも社会が認めなかった可能性。
更に低い身分故の差別もあったのではないかという点です。
信はそれでも真っ直ぐな思いのまま出世を重ねてきています。
桓騎はその対比として野盗に落ち、人の嫌がることをし続ける事で六大将軍にまで上り詰めたということです。
信によって「それはお前の弱さだ!」と言った描写が後々されるのかもしれません。
但し単なる身分制度でちょっと差別を受けたからといってもアレだけ残虐な人間にはなりません。
極端な憎悪。
身分による格差社会が原因だとしても、目の前で残虐非道な行為を自分自身も受けてきた、見続けてきたという過去があるのは言うまでもないでしょう。
復讐の怒りではないのか
怒りの定番といえば復讐でしょう。
家族や一族を何者かに残虐に殺されていた場合の復讐という線もあります。
ただ先の身分に対する差別や身内の復讐といったものでは少し「普通すぎる」気がしてなりません。
もっと大きな「人間そのものを全て葬りたい」という意思が見え隠れしています。
特に「自らの正義を持つ者」と「何も関係ないと感じている者」に対しての怒りを強く感じます。
兵士だけではなく村人すらも非道に殺してしまう人物像。
深すぎる闇といったところで身内が殺された程度のものではないのかもしれません。
なぜ首を切るのか
桓騎は別名「首切り桓騎」と呼ばれています。
わざわざ住民全員の首を切って回る桓騎です。
史実でも「首切り桓騎」と言える行動があります。
それが紀元前234年の平陽と武城を攻めた後に訪れる不落の城武遂への侵攻。
ここで李牧が去った後の趙国の軍総司令である扈輒を桓騎は討ち取ります。
そして趙兵10万の首を切り落としました。
よってキングダムだけの設定とは言い切れず史実でもそれなりのことをやっているのが桓騎でした。
趙兵については反逆の可能性を断ったと言えそうですが、キングダムにおける桓騎はなぜ住民すらも切るのか。
どこかの国に怒りを感じているのではなく人そのものへの怒りがあるからでしょう。
特に先に伝えた「自分の正義を持つ者」と「無関係だと思っている者」への怒りは相当なものです。
人の善意は残虐性と隣合わせ
桓騎が過去に見てきたものが「人の残虐性」であった可能性は高いでしょう。
普通に見える人でも陰では残忍な行動に出たり、それに目を瞑ったりしている現実を知っている。
だからこそ「人となれば全てが罪人」と考えて殺しているのかもしれません。
そして桓騎そのものも「死ぬまでやる」という覚悟で「生きること」をベースに存在していない気がします。
キングダム478話では中華統一について「極悪人」と評した桓騎です。
中華統一。
お前のその目、為しとげりゃ戦がなくなる平和な世が来ると言いてぇんだろ?
極悪人が。
中華統一ってのは強大な軍事力をもって敵国が抵抗できなくなるまでとことん殺しまくって、その国の土地と人と物、全部ぶん捕っちまうことだ。
大殺戮、大略奪。
それをやって平和な世界が来たって喜ぶのは秦人だけだ。
-桓騎-
(キングダム478話)
何となく怒りの根源をほじくった感じがとてもする発言です。
善なる行動を思っている人の行動の裏側では全く逆の事が起こっています。
桓騎はこれを善として捉える事そのものに怒りを感じているのではないでしょうか。
「俺がやっていることは正しい」
その正しさを突きつけてくる人間の善意に対する怒り。
誰かが正しいと思っている事の裏側にはそれを正しいと思わない者もいるわけです。
全ての事象は表裏一体。
この現実に気付いていない者も気付きながら善だと宣って貫く人間も許せないのかもしれません。
また「自分は関係ないと傍観する者」も同罪だと考えている可能性も高そうです。
考え抜いた結果目の前の勝利や快楽にまっすぐ生きる事こそた人間の本来あるべき姿だと考えそれに基づいた行動をしているとも取れます。
桓騎の弱点は李牧と途中で慶舎も気付いていました。
この根っこにあるという怒りの反面が桓騎の弱点なのでしょう。
人に嫌がることをして勝利を目指し、仲間同士では快楽や暴力を愉しむ。
およそ人同士の内面の繋がりや信頼がベースにはなっていません。
人の正義や善意を信じていません。
飛信隊ならいざという時に必要以上の力を出せるでしょう。
桓騎軍にはそれがありません。
要するに100の実力に対して、出せて100が最大となる軍な訳です。
非常に計算しやすく想定外が起こり得ない。
異常性のある軍略がなければ御しやすい軍と化してしまうと言えるでしょう。
以上が人の善なる行動を信じない桓騎の怒りについての考察となります。
マンガ好き
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