チェンソーマン考察|元ネタになった映画とオマージュ部分のシーンやキャラを解説

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チェンソーマン考察|元ネタになった映画とオマージュ部分のシーンやキャラを解説

「○○大好き!」という定型文。

これは『チェンソーマン』における単行本作者コメントにて毎回用いられる言葉です。

『チェンソーマン』の単行本を読んだ経験のある人なら見覚えがあると思います。

例えば『チェンソーマン』5巻における単行本作者コメントは「『デス・プルーフ in グラインドハウス』大好き!」です。

チェンソーマン5巻 作者コメント『デス・プルーフ in グラインドハウス』大好き!

チェンソーマン5巻/藤本タツキ先生/集英社
作者コメント『デス・プルーフ in グラインドハウス』大好き!

『デス・プルーフ in グラインドハウス』とはクエンティン・タランティーノ監督によるアクション・ホラー映画のこと。

作者コメントが全て映画の藤本タツキ先生

巻ごとの単行本作者コメントは以下の通りです。

  • 1巻「チェンソー大好き!」
  • 2巻「悪魔のいけにえ大好き!」
  • 3巻「ヘレディタリー大好き!」
  • 4巻「貞子VS伽倻子大好き!」
  • 5巻「デス・プルーフinグラインドハウス大好き!」
  • 6巻「コララインとボタンの魔女大好き!」
  • 7巻「女優霊大好き!」
  • 8巻「降霊大好き!」
  • 9巻「ゲット・アウト大好き!」
  • 10巻「ジェイコブス・ラダー大好き!」
  • 11巻「コワすぎ!シリーズ大好き!」
  • こうしてみると作者コメントのほとんどが映画の話題で占められていることが分かります。

    作者の藤本タツキ先生による映画への造詣の深さが伝わってきます。

    実は藤本タツキ先生の映画に対する造詣は単行本作者コメントだけではなく『チェンソーマン』作中にも潜んでいます。

    一体どのような映画たちが『チェンソーマン』世界を構築するに至ったのか。

    『チェンソーマン』と映画の関係について考察していきます。

    悪魔のもとになった映画たち

    2巻でも言及されている『悪魔のいけにえ』をはじめ『死霊のはらわた』など多くのホラー映画ではチェンソーが恐怖のモチーフとして用いられています。

    チェンソーは何でそんなに怖いのか

    設定のおおもとであるチェンソーにも映画的なオマージュが込められています。

    3巻に登場するサムライソード(刀の悪魔)も映画の影響を受けていると考えられます。

    元ネタは恐らく映画『ヘルボーイ』シリーズに登場する殺し屋クロエネンです。

    映画ヘルボーイ クロエネン

    映画ヘルボーイ クロエネン


    ヘルボーイを観る

    クロエネンもサムライソード同様、不死身の肉体を持っています。

    作者の藤本タツキ先生が「最近ですと『ヘルボーイ』とか、『アート オブ アリス マッドネス リターンズ』とかの画集がセールしていたので買いました。

    カッコいいなって思ったデザインはずっと集めています。」と発言していることからも影響を受けていることは間違いないと考えられます。

    49話『シャークネード』はサブタイトルにもあるように映画『シャークネード』の影響でしょう。

    実際、映画『シャークネード』の内容は「サメの大群を内包した竜巻が街に襲来し、主人公がチェンソーで立ち向かう」というものです。

    『シャークネード』は49話そのものを表象するうえでこれ以上なく的確なサブタイトルだと言えますね。

    また87話『チェンソーマンVS恐怖の武器人間』はリチャード・ラーフォースト監督によるSFホラー映画『武器人間』が元ネタであると考えられます。

    『シャークネード』や『武器人間』などはいわゆる『B級』と呼ばれるマニアックな映画群に分類されます。

    悪魔の設定一つとっても、藤本タツキ先生の有名どころのみならず幅広い映画への知識がうかがえます。

    ちなみに映画『武器人間』には「フランケンシュタインの末裔が世界からあらゆる思想を消すために武器人間を製造している」というストーリーがあります。

    微妙にマキマの行動原理と合致しているようにも感じます。

    要するに『チェンソーマン』は映画の内容や設定を単純な『ネタ』としているわけではなくて『チェンソーマン』との関連も考えて『ネタ』としているわけです。

    決して悪ふざけには終わらない映画への愛も感じられます。

    マキマの正体は「支配の悪魔」

    シーンのもとになった映画たち

    ナ・ホンジン監督による映画『哀しき獣』にて主人公がコンビニで辛ラーメンとフランクフルトを食べるシーンがあります。

    これは2話にてデンジがサービスエリアでうどんとフランクフルトを注文した姿と重なります。

    チェンソーマン2話 フランクフルトを注文するデンジ

    チェンソーマン2話/藤本タツキ先生/集英社
    フランクフルトを注文するデンジ

    また藤本タツキ先生が「参考にした」と公言しているシーンとして27話のマキマが挙げられます。

    27話でマキマは京都の神社から敵に対し遠隔攻撃を行うために儀式を行いました。

    チェンソーマン27話 哭声を参考にしたマキマの儀式

    チェンソーマン27話/藤本タツキ先生/集英社
    哭声を参考にしたマキマの儀式

    このシーンは『哭声/コクソン』を参考にしたと30号の『週間少年ジャンプ』にて藤本タツキ先生はコメントしています。

    2019年30号の藤本タツキ先生のコメント

    2019年30号の藤本タツキ先生のコメント/集英社

    映画の影響は扉絵にも見られます。

    46話『皆殺しのメロディ』の扉絵では首のリングに指をくぐらせて不敵に笑んでいるレゼが描かれています。

    これはバート・ケネディ監督による映画『女ガンマン 皆殺しのメロディ』のオマージュと考えられます。

    タイトルもですがレゼの取っているポーズが主人公のハニー・コルダーのものと似ています。

    断定はできませんがイラストに関しても影響を受けたものと考えられるでしょう。

    また83話にて8人の悪魔がひざまずいているシーンが描かれています。

    アリ・アスター監督によるホラー映画『ヘレディタリー』の影響が考えられます。

    『ヘレディタリー』では首なし死体や新興宗教の信奉者が跪き、復活した地獄の王ペイモンを迎える場面があります。

    家族を失った少年を筆頭にして信者と首のない生贄たちが集められる」という点において『ヘレディタリー』と『チェンソーマン』には関連があります。

    チェンソーマンはなぜ地獄で殺されたのか

    キャラクターのもとになった映画たち

    『チェンソーマン』において悪魔を倒す人間のほとんどは黒スーツ・黒ネクタイという服装をしています。

    これはフランシス・ローレンス監督による映画『コンスタンティン』の影響が考えられます。

    『チェンソーマン』におけるキャラクターの中でも特に『コンスタンティン』の影響を受けていると考えられるのは早川アキです。

    『コンスタンティン』の主人公ジョン・コンスタンティンはヘビースモーカーで肺がんのため余命わずかという設定があります。

    これは同じく喫煙者で呪いの悪魔との契約により余命2年のアキと重なる部分があります。

    また目的は持ちつつも若干ひねくれた性格もジョン・コンスタンティンとどことなく似ています。

    『チェンソーマン』は映画のシーンのみならずキャラクター造形においても影響を受けていたと言えますね。

    このように『チェンソーマン』は多くの映画作品の知識からも成り立っています

    また単に影響を受けただけではなくて映画のオマージュと『チェンソーマン』で描かれたシーンとを関連付けることにも成功していました。

    元ネタとなった映画のシーンのテーマを引用することで『チェンソーマン』のテーマやキャラクターの真意を暗に示していたわけです。

    第二部でも恐らく映画の引用が多く用いられることと思います。

    第一部では元ネタを掘ることでキャラクターの行動原理を推察できる箇所がいくつかありました。

    第二部以降でも映画の知識を駆使することでキャラクターの真意や動機、シーンの意味を考察できるのかもしれませんね。

    ※この記事はチェンソーマン好きの高田夏虫さんが書いてくれました。

    コベニちゃんは死・飢餓・戦争の悪魔と契約



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