大口真神(おおぐちのまかみ)とは何か。万葉集や日本書紀に登場する日本狼が神格化された存在
大口真神(おおくちのまかみ又はおおぐちのまがみ)は単に「真神(まかみ)」と呼ばれることもあります。
日本にいた狼であるニホンオオカミが神格化されたことが始まりです。
神格化された理由は幾つかありますが、大前提に害獣から作物を守ってくれる存在だったのが大きいでしょう。
実際に日本においては漫画やアニメ、小説でも狼を善として扱うケースが多くあります。
(もののけ姫やゴールデンカムイなどでも登場)
大口真神(おおぐちのまかみ)とは何か
大口真神とはニホンオオカミが神格化された狼(犬)の神様です。
作物を害獣から守ってくれる存在として古来より狼信仰がありました。
また大和国(奈良県)では老狼が人を食い獰猛になったことで「神」として崇められたケースもあります。
日本書紀ではヤマトタケルとの伝説が語られるところです。
ヤマトタケルと大口真神の伝説
日本神話の伝説として有名な「昼神」のエピソードがあります。
ここでは昼神と評していますが、現在の長野県の昼神温泉の地方の伝説となります。
描かれているのは「日本書紀」になるのでこの機会に読んでみるのも一つでしょう。
阿智村という昼神温泉のある場所での伝承をお伝えします。
大昔ヤマトタケルノミコト(漢字表記は日本武尊)がご東征の帰り途に伊那谷を通って園原の神坂峠へさしかかりました。
非常に険しい峠であり越えるすべがありません。
ヤマトタケルも考え込んでしまいます。
その時に悪事をする山の神がヤマトタケルを苦しめるべく白鹿に化けて立ちはだかりました。
ヤマトタケルは怪しく感じて、口に噛んでいた蒜(ヒルと読む。ニンニクの一種と言われています)を鹿に投げつけました。
それがちょうど鹿の目に当たります。
これで鹿は死んでしまいました。
鹿が死んだと同時に濃霧が巻き起こってしまい、少し先すらも見えなくなります。
困り果てたヤマトタケルでしたが、そこに現れた一匹の白狗(これが大口真神と言われている)が現れて道に迷う尊を里へ導いてくれたのです。
これ以来、神坂越えには蒜を噛んで通ると妖気に打たれる事がないと言われます。
この時の「蒜噛(ひるがみ)」が現在の「昼神」の語源になったという説があります。
(参考:昼神温泉公式案内)
ヤマトタケルと大口真神の出会いとも言える伝説です。
この後でヤマトタケルは大口真神に対して、ここに留まって人を助けるように伝えたと言われています。
大口真神は後に魔除けとしての効果も高い存在として伝えられることになりました。
ニホンオオカミが神格化された理由
大口真神は単に「真神(まがみ)」とも呼ばれます。
真神とは「本当の神」「真の神」「正式な神」「正しい神」などの意味を持っていました。
非常に格式の高い神であるのが伺えます。
御神犬とも言われる存在ですが、ここまで神格化された理由は作物を守ってくれたからでしょう。
すでに絶滅したと言われるニホンオオカミではありますが、万葉集の出来た時代には山にいて人間を襲うこともありました。
現在の奈良県である大和国では真神原にいた老狼が人間を食べて獰猛になり神格化されました。
万葉集に記された詩はそれが元となっています。
大口の
まかみの原に
ふる雪は
いたくなりそ
家もあらなくに
-舎人娘子-
熊もそうですが、一度人間を襲ってしまうと肉食獣は「人=食物」と考えてしまいます。
ゴールデンカムイでも北海道の蝦夷狼が登場して、人間を殺した動物は悪い神になってしまう話をしています。
これが先の例と言えますが、元は狼は人をそこまで襲う動物でもありません。
どちらかと言えば作物を狙う害獣であったイノシシや鹿を食べてくれる存在でした。
益獣の一つと考えられていたケースが多くあるのでしょう。
(集落を襲うことはほとんどなかった)
更に人間の善悪も見抜いて悪い人間だけを食べるとも言われていたので、神格化されていくことになります。
実際には村八分などで集落を追い出されて一人過ごす者を襲うことがあったのだろうと推測されています。
東京の武蔵御嶽神社には大口真神が祀られる
現在でも大口真神を祀っている神社や多く存在します。
その代表的な神社の一つが武蔵御嶽神社(むさしたけじんじゃ)となります。
現在の東京都青梅市にある神社ですが、大口真神を祀っているので飼い犬を連れて参拝される人が多くいます。
強い神というよりは孤高のイメージ
日本神話に登場する神様は全体的に「必殺技」のようなものがあるわけではありません。
この点はギリシャ神話などとは少し異なるものと言えるでしょう。
ギリシャ神話ではゼウスが雷を扱ったり、ポセイドンが有名な三叉の鉾を持っていたりと特有の技が存在しています。
確かに天照大御神(あまてらすおおみかみ)は太陽の神であり、月読命(ツクヨミノミコト)は月の神、そして暴れん坊で有名な須佐之男命(スサノオノミコト)は海の神です。
ギリシャ神話に似た構造にはなっていますが、各神様に技があるかと言われればそういうものでもありません。
日本の神はそういった戦いにおけるエピソードよりは慎ましくあるイメージが強いでしょう。
特にお犬様に代表される大口真神については狼であり孤高のイメージが強くついています。
何か特殊な技があるのではなく神として孤高の強さを誇っていると考えても良いでしょう。
ワンピースではヤマトがイヌイヌの実モデル大口真神(おおぐちのまかみ)と1020話にて発表されました。
神格化されたニホンオオカミの大口真神について今回はご紹介しました。
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